第12章 孤独の剣士との因果
「ん……っ!?」
掴まれてしまった、得物を持った自身の手を引き戻そうと力尽くで抗うが
斥力もない、純粋な膂力では敵わない。
「ん、っん –––––、ぁふ、」
獣のように舌を貪られ、不意打ちのそれに力が入らない。
びくんと震えた真綿の華奢な肢体を押さえつけるように
福沢の腕の中に閉じ込められ、押し戻した力は弱いものだった。
「んっ……く…ぁ、む、んんっ…?」
唾液の入り混じる音が二人の間だけに響き、何かが急速に失われてゆく。
何かってなんだ、さっきまでの殺意とか闘志とか憤怒とか
そんなレベルじゃなくてとにかく何か。
「〜…っ、ぷはっ… ってはあ!?」
ようやく離れた唇から出た第一声は、簡素なものだった。
「は!? ぇ、はあ!?」
「ふ、いかな暗殺者でも常人の婦女のように驚き恥ずかしがる……か。」
福沢がぱちんと音を立てて刀を鞘に収めた。