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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第12章 孤独の剣士との因果





「っ––––!」


やり辛い…



甲高い金属音と共に、刀の剣先がはじかれた。


真綿がそのままナイフを引き寄せて体重を掛け、福沢の袈裟に押し込む。



「……ほう?」


がら空きになった真綿の懐へと福沢の掌底が放たれ、

それを躱し、

宙へと返ってしなやかに着地した。




真綿がすでに整えられた体勢のまま、ナイフを構える。



「…ふむん」


やはり、得意とする糸が封じられてしまったのが一番大きい。



(しかし、だからとて…)

真綿が相手を睨め付けた。




「ここで退こうものなら、暗殺者の名が泣こう」


「成る程…音に聞く暗殺者の腕がどれ程のものかと
期待していたが…

これは、良い剣士に会ったというものか」



…ィイン、と甲高く高い音が鳴り響いた。


真綿のナイフが、迷うことなく相手の利き腕の腱を削ぎ落とそうとする。


その剣筋に迷いはない。



「妾はあるじ殿のためならば…

この身、使い捨てられるまで」



そのまま軸足に体重を掛け、半回、蹴りを放つ。


元々の真綿の脚力の強さが手伝ってか、福沢に掛かった負荷は大きかった。



その寡黙な彼の表情に、僅かな焦りが滲む。


そこへ乱歩からの叱咤が飛んできた。




「社長! 勝って! 勝たないと救えないよ!」



その文言に目が醒める。

霧のかかる頭から迷いが払われ、本来の目的を思い出した。



動かなくなった福沢に第三撃、と真綿のナイフが迫ったところで

その細い手首を掴んだ。



得物を持つ手を掴むなど、愚かにも程があると

のちに真綿に叱られることになるのだが……



「は、はぁ……っ!?」




驚いた真綿の美貌が 訝しげに歪められ、今だと福沢が


その唇をふさいだ。



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