第12章 孤独の剣士との因果
「だから?」
嫌な予感が胸を満たしていた。
今はあるじ殿のいない、自由な人斬りの身。
自分の本性と理性のままに、無垢に無情に手を掛ける暗殺者。
誰かに指図されて斬るのなら、
それは再びあるじを得た時のみだ……。
「まさか軍門に降れとでも言うつもりか。」
真綿が、自分がミミックのあの副司令に敗れたことを認めたその発言に
その二人が少し驚いた。
「あの時 妾は負けた。
いくら刃に曇りがなくとも、主命を果たせなかった者に
良き道などなかろうよ。
貴様らがそれを躙ると言うのなら…」
怪我の痛みは無視できるものではないが、だからと言って
滅多に痛いわけではない。
真綿がとんと乱歩の背を押して、解放した。
「何故–––––……」
目を見張った福沢に、真綿が糸を引き戻して 庭に出た。
そして向き合い、彼を射竦めるように見据えた。
獣のように獰猛な笑みと目。
殺戮と畏怖を一方的に押し付けることに慣れた、諦観の眼差し。
自分の、あの死を確定付ける起因性異能力によって荒廃した心。
そのどれもに、未だ暗殺者としての矜持が残っていた……
「さあ我が憤怒、受けるが良い福沢殿。
貴様は妾に、消化不良なのかと問うたな。」
福沢の刀を一瞥してから、自分の仕込み靴からナイフを抜き取った。
「愚問も愚問。
当然だ。
未だかつてないほど、今の妾は無を求めている。」
笑った真綿の笑みは、冷めきったものだった。
「戦えと?」
「ふむん」
チリ、と福沢は自身の肌がちりつくような気配に襲われた。