第12章 孤独の剣士との因果
この3人の言う『政府』は内務省異能力特務課のことだ。
対・対異能力者という表向きのものを掲げ、
特A級危険異能力者(真綿や三島も然り)を監視する。
本来ならば、機関銃を装備した警備部隊に囲まれる
監獄で監視されるような、
そんな異能力指定を受けた者を重点的に……だが。
その為、異能力特務課は精鋭されていて人数は少なく
臭い物にはフタという司法省とは滅茶苦茶 仲が悪い……
実際、異能力なるものは稀有なのだからそこを差し引いたとしても____
(いや、うん、仲の悪さに変わりはないさね……)
自分の考えに呆れた。
「ご麗人……貴公の名を聞いても宜しいか?」
銀髪の彼が、こちらの部屋に入ってきた。
目の端に糸を捉えながら、自身が切れないように避ける。
「…名乗るなら、というこの国の定句をご存知かや」
「嗚呼…。 しかし、貴公は私の名を知っているのではないか?」
まるで腹の探り合い、殺気と闘気の混じる空気。
乱歩は人質になりながらも、
この2人の言葉遊びを楽しそうに見物している。
「…ふむん。 妾の名は真綿…、花房真綿」
「福沢諭吉だ。」
福沢と名乗った銀髪の彼に、
真綿は表情を変えることはなかったものの、違和感を覚えた。
(『孤剣士 銀狼』……。
元政府の刀遣いが、何故…
否、今は違うというのならそれで良し)
真綿のさっぱりとした思考を読み取ったのか、
福沢がその件に関して詮索されない事に息を吐いたように見えた。