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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第12章 孤独の剣士との因果


「あちらの方は礼儀作法に富んでいるようだが?」


「僕に常識を求めないで!」


名探偵然としたその少年がそう言い、向こうの人に目を向ける。



蜘蛛の糸のように張られた

その全面の糸は巻き戻さない。



「……入るぞ」



すっと小さな音を立て、障子が開く。


直後、こちらの和室の様子に 目を丸くさせた。


そしてその着物を纏う 男から、警戒心が滲む。





「……乱歩が驚かせたようですまない。

しかしその糸は降ろして貰えないだろうか。」



淡々と言ってきた、けれど要点だけのその言葉に余裕はない。

彼にとって、この少年は ただの他人ではないと一目で判る。




「…今ここで、この格好の人質を手放すほど
妾の暗殺の腕も刃も 鈍っていない」


「消化不良なのか」



燻んだ銀色の髪に、水銀色の瞳。

若干の焦りと、貫禄を醸し出す目線。



「何故、妾を助けた。

恩を売ったつもりかや。」



指先に繋がれた糸が、きりきりと

殺戮の音を立てた。



「あるじに言われれば切る
あるじの為ならばどのような事にも身を捧げ、手を染める。

それが、暗殺者の矜持だと理解していてのことなら

今ここで首を落とす」




君の歩んできた人生は物騒だね、と少年が言った。

物騒––––そんな言葉で片を付けられる物ではなかった。




森の私邸暗殺者として、三島の護衛として…

何年間も この身に殺戮を全うさせる事を押し付けた。



そこに価値を見出していたから、とも言う…



「妾の事を知っていたのなら、貴様らは政府か?」



妥当な質問に、乱歩が嫌そうな顔を作った。

その首筋に、糸を突き付けられながら。



「《ウォッチャー》と同じにされるとか、お願い下げだね!
あんな無能連中と、この名探偵を一緒にしないで!」



少年の「ウォッチャー」という露骨な表現に、銀髪の彼と、妾は眉を寄せる。

銀髪の方の男にしてみれば、その反応は
乱歩への叱咤と窘めが入っているのだが____



そも、ウォッチャーとは異能特務課の揶揄的表現なのだ。

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