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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第10章 スイートセンチメンタル …3月14日


「首領」

「…おや、上橋君。」



その豪奢なフレンチドアを開けた先に、ここの代表が座っていた。

彼の座す玉座のそばには気配の薄い暗殺者が侍り、
その肘掛にもたれながら、何やらこちらを面白そうに見ていた。


首領に寄り添うかのようにするその姿は、成る程、老若男女を惹きつける相貌をしている。

三島幹部とはまた違った『危なさ』が滲み出ていた。



「…あの、三島幹部のことで…」

「うん、どうしたの?」



彼の手元の電子機器端末には幾枚ものウインドウが開かれ、
心電図のようなグラフが波形となって表示されている。

……三島幹部が生きているという証拠だ。



「三島幹部……もしかして、その。
自身の異能力を、濫用しているのでは……と…」


「おや。どう思う、真綿君?」


首領自身は答えることはなく、三島幹部の昔なじみである真綿様に問うた。



「由紀は判っていて、その異能を応用しているだけさね。
心配はいらないよ。

無差別に人を惹きつけ、その『愛の枷』を緩める。
由紀の応用の常套手段さ。

ま、男も恋愛面で惹かれるが、そこは由紀だ。


そこはそれ。何とかするのだろうよ。」



そうだったのか。

彼に強く惹かれ、抱かれて、愛されたいと思ったのは……

彼から、異能力が滲み出ていたから。



その甘い毒を、いつの間にか吸い込んでいたから。
あの、花の楽園という密室で。



「妾が感染し難いのは____

ま、多少の免疫と、そら、あれだ。
毒を以て毒を制する、ってやつさね。」


そう笑った真綿様の色気は、同性から見ても生唾を呑むほどに凄まじい。



「由紀は女子を尊び、また花の如く丁寧に扱うがな。
女が勝手に惹かれ、吸い寄せられるぶんには手加減しない。

向こうが勝手に用意する据え膳は遠慮なく食うということさね。」



オブラートにも包まれない直接的な物言いに、顔が熱くなった。

きっと頬も赤い。



「上橋」

「はいっ!?」


いきなり話しかけられ、声が裏返りそうになってしまった。



「…フ、何をそう驚く? 由紀は確かに、博愛的な面がある。

…が、それ以前に男さね。

泣かされることはないと思うが……
貴様でなくとも、女子が心も身体も許したなら…由紀は容赦しないぞ?」



くすくすと彼女が笑った。
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