第10章 スイートセンチメンタル …3月14日
「ふふ…っ」
まるで恋に現を抜かす少女のように。
菜穂子は 三島を脳裏に思い浮かべながら、口角を上げた。
自分の敬愛する幹部と、今日たくさん話せたことに大いに満足していた。
心臓が心地よい温かさと拍動に包まれて、あの声を思い出すだけでにやけてしまいそうだった。
「…三島幹部って、もう、本当に素敵……っ」
芥川先輩は、こう、触れるだけで切れそうな鋭い格好良さというか、
それはもう一匹狼っぽい粗忽さがあるけど……
三島幹部は何というか、むしろ触れていないと脆く崩れてしまいそうな
そんなことは絶対に無いということが判るのに、心が切なくなる。
三島幹部を知るほどに、話すたびに。
その指先で、瞳で、愛されてみたい……
もし____。
全身で愛されて、愛を囁かれたなら。
「……あれ?」
ふと、気付いたことがあった。