第1章 ライナー&ジャン(進撃/104期)
アニちゃんに割り当てた小ぶりのお茶椀にたんまりと白米を盛って返すとクールな表情が少しだけ綻ぶ。おかずよりも白米がお気に召したらしく、色々なふりかけを独占して丁寧に味わっている姿がたびたび視界を切っていた。たくさん食べる女の子って本当に可愛い。
「アニちゃんも、良く噛んで食べてね」
「心配されなくてもそうしてる」
「そっか」
「あ、ずりー! 俺もお願いします!」
「うん」
それを見ていたコニーくんも元気良くお茶碗を差し出してきた。彼も朝御飯をねだった張本人なだけあって小柄なわりに良く食べる。一合以上の白米は彼の体のどこへ消えていくのだろう。その何十分の一くらいのご飯粒は口回りに付いているけれど。これはまた別種の小動物を思い起こさせる食べっぷりと言って良い。
炭水化物独特の甘い湯気が立ち上るお茶碗をコニーくんへ返しながら炊飯器の蓋を閉める。カチッと小気味良い音が鼓膜を浚えば一区切りだった。
早々に食事を終えていたミカサちゃんがコニーくんの口元から食べこぼしを取っていたぼくに向かって急に爆弾を投下した。
「どうして献身的に尽くすのですか」
「ん?」
「私達に面識はない、ので、衣食住を提供する理由がない……なのに貴方は私達から金銭を要求するようなこともなく、私財をはたいてくれる。何か意図があると思うべき」
「……」
ミカサちゃんの台詞に多国籍の波がどよめく。誰かの肉叉を落とした音が響き、運悪くぼくの爪先に先端が跳ね跳んできた。反射的に短く声を上げれば、落とした張本人らしいベルトルトくんが蒼白した顔で何度も謝罪を降り注いできた。
「ごめんなさいっごめんなさいっ!」
「大丈夫。ぼくこそごめんね、声出しちゃって。痛くないから気にしないでね」
「……は、はいっ」