第5章 SSS キャラ×男主:漫画作品篇(―/2日更新)
★GK尾形百之助(同衾主続き)
完全に言葉を失った尾形が戸惑う俺を見下ろしながらどのような判断をつけたのか分からない。勝手知ったる風に真っ直ぐ寝室へ向かって乱暴にドアを蹴破ると、油断していた俺をベッドへ無遠慮に投げ入れた。尻から強かに着地する。
「あたっ!」
「ほう……俺を忘れた、と?」
「忘れたんじゃなくて知らないんです!」
尾形は「なおさら質が悪い」と苦々しく呟いて顔を顰めた。そのままベッドへ乗り上げたかと思えば俺の腰を跨いで馬乗りになり、肩を押さえ付けて縫い留めてきたからサァ大変。なぜ途中で抵抗しなかったんだ俺。酔っ払いの判断力は雪みたいに儚くて泣きそうになる。
「どいてください」
「退きません。俺を思い出すまでは」
「オガタヒャクノスケさんですよね知ってます」
「……そうじゃねェだろ」
その場しのぎの軽口が相当お気に召さなかったのだろう。作中で度々見掛けた満面の笑みを噛みながら、尾形は銃剣差と呼ばれる革ベルトから鈍く光る剣を引きずり出した。それを眼前で弄ばれて、命すら弄ばれている気になってるのは俺の考えすぎかな? 尾形クン? 待って?
★GK尾形百之助(同衾主続き)
「未来の尾形さんなら知ってます」という近所迷惑も厭わず発した叫び声に尾形が目を見張る。言葉を反芻して眉宇を歪ませる姿からは戸惑いが伝わった。俺の恐慌状態から担がれているとも思えなかったみたいで、だからこそ余計に怯んでいた。
「何、意味わからんことを」
「意味がわからないことが起きてるのは今に始まった事じゃないです」
「左様ですね」
「確かに一度、尾形さんは家に来てます」
「なんだ、やっぱり覚えて下さってるじゃないですか」
安堵したような姿に胸が痛む。人が悪いですね、なんてとろけるほど甘く囁かれたら『仮定』を話しづらい。恐らく真実であろう『仮定』の話だ。俺は顔を背けながら呟きを噛む。罪悪感から逃れたい気持ちが反映されて、舌の上から喉まで巻き戻されていくように声が小さくなる。
「そうじゃない……俺の知ってる『一度』は貴方がもう少し大人になった姿でやってきた『一度』の話です」
「……」
だからやっぱり貴方の事は分からない――最後にそう絞り出せば、尾形は飛来する矢羽根のような音で息を飲んだ。傷つけるつもりは無いけど嘘はつけない、そう思って正直に話したのに別の罪悪感で押し潰されそうになった。
→