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日章旗のデューズオフ

第7章 【肆】煉獄&実弥(鬼滅/最強最弱な隊士)



「何とか言ったらどうなんだァッ!?」
「ひっ」
顳顬を青く泡立たせた風柱殿は影を色濃く被った攻撃的な笑みを浮かべる。そして胸ぐらを掴んだかと思うと、俺達を隔てる鳶型面頬が鬱陶しいのか、力加減を間違えた平手打ちで鉄製の嘴を吹き飛ばした。頭の後ろで組紐を括っていた筈なのに、それを千切り飛ばす威力とはゾッとする。
僅かに傷付いたらしい頬から血が垂れている感触がしたが、拭う暇など無いだろう。堪忍袋の緒が切れた風柱殿は誰にも止められないのだから。つうか、しのぶといい貴方といい、今日は柱の洗礼受け過ぎでは。
「柱との約束より優先すべき事があンのかよォ岩注連ェ」
「謹慎処分を受けていました申し訳ありませんッ!」
「謹慎処分だァ? なに莫迦な事しでかしやがったァ」
「悲鳴嶼さんの目の前で『空蝉』を使ってしまいましたッ!」
恐怖で震える唇が真実を言い放った途端、風柱殿は俺の顋を下から鷲掴んだ。杏寿郎さんもかくやな至近距離まで顔を寄せてきたが、その表情の恐ろしいこと恐ろしいこと。人間本当に戦慄した時は声が出なくなるって話、眉唾じゃなかったんだと実感した。
「――」
「誰の呼吸を見やがったこの莫迦野郎がァ」
「……ッ、それは」
「風の呼吸は絶対に見ねぇと俺に啖呵切って目隠しまでしてやがった癖になァ……他の呼吸に浮気してンじゃねぇよ」
「な、なんか、すみません……」
「ひとつ見ちまえばふたつもみっつも同じ事だろ。今直ぐ風の呼吸を見ろ。分かったなァ」
「いや、でも」
「分かったなァッ!!」
「はいぃぃッ!!」
恐怖と勢いで是と答えてしまったが、こればかりは悲鳴嶼の許可無く行動する訳にはいかない。まだ杏寿郎さんの復帰まで時間があるだろうし、一旦悲鳴嶼を探しに行く振りをして風柱殿から逃げてしまおう。決まり!



第肆話 終わり
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