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日章旗のデューズオフ

第6章 【参】煉獄&悲鳴嶼(鬼滅/最強最弱な隊士)



邸の裏手に据え置かれた薪棚から良く乾燥した薪木を何本か見繕い、羽釜が嵌る竈へ焼べてから手鞴で酸素を送り込む。そうすると直ぐに竈の中は良く燃えて、東雲の空に炊煙が溶け入るように揺蕩い始める。
「……好い加減か」
今朝の朝餉は茸と根菜の炊き込みご飯だ。悲鳴嶼の好物である。煉獄さんがどのような一日を過ごしたのかを邸の主へ逐一報告するのが毎夜の日課だが「炎柱殿への昼餉にさつまいもご飯を用意しました」と伝えたところ「明日の朝も炊き込み飯を用意して欲しい」と遠回しに強請られたので張り切っている。
分かります分かります、自分の好物なのに食べられなかった時のちょっと悔しくて羨ましい気持ち。張り合う気はないけれど自分にも拵えて欲しくなる気持ち。旨味を想像して舌が其れになる気持ち。だから全然構いません、毎日同じもの作ることくらい。アンタの為なら全く苦じゃないです。
「後は吸い物だな……」
椀種は豆腐、つまは小松菜、吸い口は冬柚子が良い。主食を甘辛の濃い味付けにしたから、此方は出汁と僅かな醤油であっさりと仕上げよう。調味料棚と食材が詰まった籠を覗き込みながら顎を捻る。こういった炊事の基本的な技術と知識は独学な側面もある一方で、姐さん――恋柱殿に伝授して貰った事だ。
「おはよう! 名前は今朝も早起きだな!」
「……、おはようございます、煉獄、さん」
台所の暖簾を潜って現れた炎柱殿――改め煉獄さんを振り返ると、太陽も昇らぬ内から朝日を浴びた気がして目を細めた。黒曜の欠片を切り落とした焔色がしっとりと濡れている事から朝風呂に浸かってきたのだろう。
悲鳴嶼も滝行の後は身体を温めるので飯炊き前の風呂の支度は習慣付いている。気の利かない煉獄さんではない、一番風呂はきっちり悲鳴嶼へ譲っている筈だ。そして風呂まで済ませた悲鳴嶼は朝餉待ち遠しさから――炊き込みご飯の時は特に嬉しそうに――此処に一旦顔を出す。

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