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日章旗のデューズオフ

第4章 【前】悲鳴嶼&宇随(鬼滅/最強最弱な隊士)



「シィッ……――」
全集中。噛み締めた歯列から痺れるような細い呼吸を吐き出すと、全身の産毛が総立った。当時の鬼殺隊最強と謳われた鳴柱様が引退されてから雷の呼吸は終ぞ『見られない』ものとばかり思っていたが、どんな因果か彼の弟子だという我妻善逸に会えた。
竈門より少し早く此処へ辿り着いた我妻に壱ノ型を披露して貰ったばかりだから、まだ記憶に新しい。初めてにしちゃあ感覚は悪くない、体躯に纏わり付く紫電は、俺に確実な一歩を保証してくれている。

命を輝かせろ、技を奔らせろ。

「雷の呼吸 壱ノ型……――」

***

「何を騒いでいる」
「っ、……!」
悲鳴嶼の大きな右掌が俺の日輪刀のかしらを押さえ付けた。その反動で、僅かに覗いていた刀身は呆気なく鞘に戻される。甲高く鳴り響いた小気味良い鍔鳴りが、彼の低い声をより引き立たせていく。
「岩注連 名前」
俺の名を呼びながら覆い被さるように顔を覗き込まれる。鬼殺隊内に於いて比較的体躯に優れている俺に対してそれが適うのは悲鳴嶼くらいだ。あと天元。自分が弱者として扱われる感覚は決して慣れない。
「……!」
咄嗟に背を逸らしたが、悲鳴嶼相手では大した距離を稼げなかった。俺も無意識にこうして他人を威圧してるかもしれないから気を付けよう、竈門くんさっきはごめんね――逃げる事を諦めた脳内は自戒で満たされる。
「ぅあ"っ……」
現実逃避している間に伸びてきた左掌が、俺の首に巻き付く革帯を引き掴むと、有無を言わさず持ち上げた。感情の読めない顔が近付くぶんだけ爪先が浮き、後ろ頚に過重が掛かって息が詰まる。悲鳴嶼は俺を叱責する時、この革帯を引っ張るのが癖になっていた。

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