第4章 【前】悲鳴嶼&宇随(鬼滅/最強最弱な隊士)
「『空蝉』を使ったな」
「も、申し訳、ありませんっ」
「いつ雷の呼吸を見た」
「先程、鳴柱様のっ、弟子という隊士に、会いまして……っ」
「……」
喘ぎながら紡いだ弱々しい声を拾った悲鳴嶼は、眉宇をこれでもかと引き絞る。途端に人相が悪くなり、降り注ぐ怒りが星火燎原の如く体内で渦巻いていると俺に知らしめた。
「名前、お館様がなぜお前を人目の付きにくい場所に置く判断をされたと思う。私がなぜ他者との接触を最小限にしていると思う。お前が見るもの全てを『模倣出来てしまう』からだろう」
「はいっ」
「そしてその技は、お前の身体と日輪刀に多大な負荷を掛けると重々承知している筈。現に日輪刀が鍔鳴りを起こしたぞ。その音は拵えに緩みが生まれたから鳴るのだ」
「はいっ」
「柱稽古の間、邸の外に出る事を禁ずる。刀は担当の刀鍛冶を呼んで直ぐに預けなさい」
「はいっ」
蛇に見込まれた蛙の俺。更なる叱責を避けつつ頚への負担を軽くしたい一心で生返事しか出来ない。でもちゃんと聞いてるから良いよな? ってか最後さらっと謹慎処分与えられたな?
背後では「程々に頼むぜ、旦那ー」という天元の本気で心配していない軽薄な声と、竈門の「大変な時に居合わせてしまったぁ……っ」という薄情な独り言が聞こえてきた。あれもこれも全部、貴様らさえ来なければ起こり得なかった事だったんだが!?
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