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日章旗のデューズオフ

第1章 ライナー&ジャン(進撃/104期)



「……んー、ひどい目覚めだよ……ふぁ」
「太陽が昇ったばかりでヤるのもなかなかイイもんだぞ、背徳的でな」
「スれてるんだね……」

人差し指の関節で目を擦ると漸く瞼が開いてくれる。数回まばたきを繰り返して膜に絡まった睫毛を解けば、視界に映る幾つもの星ぼし。生理的な涙が見せる複数の水玉は、喉を鳴らして冗談だと笑う金色の獅子によって拭われた。



wonder star -12人は1ダース-



「おはよう」
「おはようございます、是正さん! デンシレンジ勝手に使ってます」
「うん、いいよ」

ライナーくんと台所の暖簾を潜ると、エレンくんが稼働している電子レンジの中を覗き込む中腰の体勢から振り返って挨拶をしてくれた。弾けるような笑顔はぼくに向けられたものというより見慣れない電化製品への好奇心ゆえといったところだろう。
隣で同じ体勢をして中身をしげしげと見詰めているアルミンくんなど、余りに真剣過ぎてぼくの存在に気付いていない。昨日なんか掃除機の排気口に顔を近づけて仕組みを頻りに気にしていた。汚いよってぼくが叫んでも耳に届いてないみたいで、何やらぶつぶつ呟きながら紙へ熱心に書き込んでいたっけ。

「あれ……是正さん?」
「あ? あれ、マジだ、なんでだよ」

微笑ましく二人を見ていると、廊下の方から前髪を湿らせたマルコくんとジャンくんが歩いてくる。首から下げたタオルでこめかみの辺りを拭いていたジャンくんはぼくを視界に収めた途端に然り気無く目を剥いた。それもそのはず、遠回しに『明日は起こさなくて良い』と伝えた相手は他でもないジャンくんだからだ。
そもそもぼくを起こしに来る必要性なんかこれっぽっちもないんだけれど、彼等がこの家に居候する形になった時、ぼくになるべく負担をかけないこと・少しでもぼくの役に立つこと、という決まりを作ったらしい。目覚まし時計の代わりを務める事が役に立つことに繋がるのかは疑問だけど、見知らぬ世界で出来ることを見付けようと必死なんだろう。
話を戻そう。今朝の目覚まし当番はジャンくんだった。だからぼくはお断りの次第を彼に伝えたのだけど、それを知らないでいたライナーくんが起こしにきてしまったものだから、ジャンくんはこの場にぼくがいるという事態を上手く飲み込めないでいるらしい。
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