第3章 阿散井恋次&京楽春水(BLEACH/酒宴の悪戯)
「だからといって恩着せがましく言うこときかせようとすんのはどうかと思う」
「テメーが俺の命令聞くのは当然だろ。誰がここまで育ててやったと思ってんだ」
「……」
「あァ?」
「……三席でしゅ」
凄まれた時点で頬を思いっきり掴まれてしまったから妙な噛み方をした。三席がそれを耳聡く拾ってしまい、畳をバシバシ叩きながら腹を抱えて笑っているのが、なんとも言えない羞恥を煽る。酒の席につくたびに彼への好感度が下がっていく理由はここにあるのだと言うことを本人は未だ知らない。
「でしゅっ! でしゅだってよっ! あーっはっはっはっはっはっ!」
「笑いすぎですって」
「だってよっ、テメーの面でっ、ンな台詞吐かれたらっ、我慢できねえよっ、んんんふふふははははっ……!」
「……」
三席は超の付く笑い上戸だった。といっても、笑顔を振り撒いているだけならお好きにしてくれで済むが、そうは問屋が卸さない。
彼は過ぎた悪戯を繰り返しては飽きるまで嗤うという、我が友人をも凌ぐ鬱陶しさを内包しているのだ。正直な話し、大して面白くもない場面で涙を飛ばしつつ一人げらげら笑っている様を見るとかなり疲れる。
名など呼ばれながら背中を叩かれた日には巻き添えに合ったような気さえするから余計だった。気楽だけど、結局この人の呑み方も面倒くさい。
「三席、もう今夜はお酒控えましょうよ……」
「なんでだよ、俺ァまだまだイけるぜ」
「三席ぃ」
肩を落とす俺を余所に、三席は隣席の檜佐木先輩と飲酒の角逐を始めてしまった。一体どんな経路で手に入れたのか知れない現世の酒瓶が有象無象と転がる畳へ、今まさに栓を開けた酒が瞬く間に空になって放り投げられていく様子は良く言って圧巻だった。
だから此の呑み競べが初戦ではないと悟りはしたものの、彼らはそれを感じさせない速度で呑む。実はあの空き瓶全てに水が入っていたなどというオチではなかろうか、そんな気さえしてくる程だ。
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