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日章旗のデューズオフ

第18章 【拾伍】炭治郎&炎&水(鬼滅/最強最弱な隊士)



「名前さん、ありがとうございます」
「……良い良い。その代わりと言っちゃあ何だが、邸の奥に居る玄弥に飯届けてくれ。そんで一緒に食べちまえよ。後で俺が取りに行くから、膳は廊下に出しておくよう伝えておいて貰えるか」
「そんな。持ってきますよ」
「……良いから、ほら」
二人分の料理が所狭しと並ぶ長盆を竈門へ預ける。修行場での行動をなぞるように、また肩を掴んで身体を反転させ、背中を軽く押してやった。不意を突かれた彼奴は数歩ほど踏鞴を踏んだが、流石は選り抜きの剣士と言うべきか、瞬時に体勢を立て直している。
俺の内に渦巻く昏い自責思念を嗅ぎ取ったのか、彼奴は不意に此方を振り返った。強烈な光量を有する朝陽を内包したような瞳には僅かな憐憫が滲んでいる。言い淀むという心理的葛藤とは無縁だとばかりに勢い良く開く唇が、節介を焼こうとする予備動作に思えた。すかさず掌を見せて強引に断ち切る。余計な言葉は差し挟ませない。
(……お前とは、別の機会に話をしようじゃねぇか)
顳顬を泡立たせながら微笑めば、竈門も閉口して息を飲んだ。俺が明確且つ強固な一線を引いた事実を理解したらしい。長盆を庇いつつ軽く頭を下げると潔く踵を返して駆け出して往く。然りとて遠離る跫音はどこまでも軽やかで、豊かな感情を反映させた気魄共々つい羨ましく思い、焦がれそうになる。
「…………はぁぁぁ」
台所の入り口に掛かった暖簾が名残惜しそうに最後の一揺れを見せて止まった。それと同時に、少し前へ突き出した腰に体重を乗せて立位する胡乱げな姿勢を緩慢に正す。骨盤が軋むほど掴んでいた掌を引き剥がすように力を抜き、肺腑の底に渦巻いた熱を蒸し返すように重い溜め息を零した。
尽の呼吸を使っても修復されない頚の縄目痕を居心地悪く掌で摩り上げれば、其処に来て漸く己の疲労を自覚する。時機を揃えて『空蝉』と尽の呼吸を同時に行使した事は無かったが、そうなると流石に肉体が悲鳴を上げるらしい。
「……虎號、三毛號。来てくれ」
──面格子窓へ声を投げると、ふたりの成猫が勝手口の隙間から台所へ滑り込んで来た。トラゴウが茶虎柄の雄猫で、ミケゴウが三色混合柄の雌猫である。何れも俺の『忍獣』だ。普段は野良猫に紛れて屋根の上や庭先で過ごしているが、ひとたび號名を呼べば疾く疾く駆け付け、俺の手足となって活躍してくれる賢い子達なのだ。

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