
第18章 【拾伍】炭治郎&炎&水(鬼滅/最強最弱な隊士)

痣の有る額から指先を差し込んで、側頭部を優しく撫で上げてやると、竈門は、花札の『芒に月』を想起させるような日輪の耳飾りを揺らしながら擽ったそうに微笑んだ。
「手伝いはもう大丈夫だ。それより、お前は皆と飯食わなくて良いのか? 炎柱殿も居るだろ」
「俺、不死川さんへの接近禁止命令が出てるので!」
「…………え?」
「配膳はともかく、同じ場所で食事をするなと怒られました!」
「笑顔で言うことじゃない」
同じ相手への接近禁止を言い渡されている玄弥の姿が脳裏を過ぎる。まさか揃って粗相を働いたのではあるまいな、という疑念に口角を引き攣らせていれば──斯く斯く然か然か、何故に己が接近禁止命令を拝受するに至ったかを事細かに縷述し始めた。
語られる内容の所々に不明瞭な擬音が多用され、その因果関係の把握には多大な刻を要してしまったが、一先ず二人が『無鉄砲な仲直り』を敢行した事だけは分かった。親の心子知らずといったところか。うぅん、おばかさん達め。
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「あ、自分の分を置いてきてしまった……」
「……あぁ、定食? 良いよ、今から新しく盛ってやるから」
「でもそれは甘露寺さんのおかわりの分では……」
「お前が食い損じたほうが悲しむ人だよ、姐さんは。だから気にするな。それに色々手伝って貰った礼もしたいし、俺がお前にも食って欲しいと思ってるんだ。嫌じゃなかったらだけどな」
「嫌なわけ無いです! 凄く良い匂いで堪りませんでした!」
「そうか」
込み上げてきた得体の知れない面映ゆさを誤魔化すべく、彼奴の旋毛辺りへ無造作に掌を乗せた。前髪を掻き分けた時分の繊細な所作ではない、想像より幾分も柔らかかった毛質の感触を一層楽しむように、小ぶりな頭を遠慮なく撫で繰り回す。
そうすると竈門はきゃらきゃらと年相応な声を上げて笑った。榾火を思わせる暖かな気魄と紅葉を散らした笑顔が、俺の心に根差す猜疑心を忽ち晴らしていく。初対面の時のように陽の気が厭わしいと唾棄するのではなく、心地良いとさえ感じられた事はきっと、俺にとって瑞兆なのだろう。
しかし、その安寧に身を委ね切るには俺の命が余りに濁り過ぎていた。『人の際遇は斉なる有り 斉ならざる有り』と言うが、これまで積み重ねてきた忍の業が、殺人を躊躇わなかったが故に捩じ切れた因果の軌跡が──人の理の道を今更往くのかと指弾して嘲笑う。
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