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日章旗のデューズオフ

第2章 ライナー・ブラウン(進撃/疲れない恋の仕方)



――と、そんな風にじゃれ合っていると当然ながらちゃちゃを入れてくる無粋な奴が現れる。その主犯格は兄貴を良く思っていない同期代表のエレンだ。嫌なら側で食事を摂らなければ良いのに、決まってこいつは俺達の近場に座す。その左右をアルミンとアッカーマンが固めている姿はお馴染みで、俺達兄弟よりもよっぽどベッタリな気がしなくもない。
そんな実態を棚に上げて必ずエレンは一言投げて寄越すのだけど、どうやら会心的な台詞でジャンを打ち砕きたい衝動があるらしく、しょっぱいことにそれが中々に単調なんだ。

「ホモ兄弟が」
「……あ?」

いつも口を開けばホモだなんだと生温い事を宣うお子様丸出し口撃しか持ち合わせていなくて、聞いている此方には全くもって響かない。兄貴も特別エレンの事を毛嫌いしているせいで過剰に反応しているが、それは『エレン』が突っ掛かってくるから反射的にそうしてしまうだけで、差別発言に対してではなかった。それが分かっているから俺も冷たい視線を野郎にくべるだけで割りと満足なのだ。
ギャンギャンと兄貴たちが言い合いの殴り合いの……に発展していくと、せっかくの心地良い時間は急速に終わりを迎える。兄貴の腕の中は温かくて、飢えに似た衝動や不安を取り除いてくれるから、中途半端に突き放されると反比例して憂鬱が膨らんでいった。

「んー……エレンのヤローが俺の兄貴をとるー……」

机に額を押し付けてむくれていると、ふんわりと髪を撫で付けてくるゆったりとした温もりが降りた。ううむ、と唸るとビクッと指先が震えたものの、俺が振りほどかないのをいい事に何度もいいこいいこしてくれる。ジャンとお揃いのツーブロックをなぞられると流石に掻痒感が背筋を駆け巡るが、嫌ではなかったからすきにさせる。
きっと臍を曲げた俺に気付いて喧嘩をやめて戻ってきてくれたジャンだと思った。大きい掌とか、高い体温とか、たどたどしい手付きとか、明らかに違和感があったのに俺はそれがジャンだと思い込んだ。されば後頭部を包む手をやんわりと握ったし、なんならそのまま弄ぶように指を握ってみたりして俺なりの愛情を返していて。
――だから急に、それも熱烈に抱き締めてきた存在が、兄貴側ではない『背後』からやってきたことに心底きもが冷えた。

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