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日章旗のデューズオフ

第17章 【拾肆】宇髄(鬼滅/最強最弱な隊士)



第二の『灰身』では組織を灰のように流動化させ、徐々に移動させる。健常な筋肉を皮下で波打たたせ、既存部位から欠損部位へと質量を移送するという事だ。
通常、筋肉や皮膚は筋膜によって固定されているが、超高周波の筋振動を与える事によって一時的に細胞間の結合を緩め、流体に近い状態に変換出来る。
特殊な咬合力とやらで鬼を喰らって一時的に鬼に成る相弟子も居るのだ、俺の肉体流動のおぞましさも大目に見て欲しいところである。
そう思う反面、深層心理では忌避される事を願っている。腫れ物に触れるように扱われて共存されるより、突き放された方が気が楽というもの。岩注連という蔑称と共に悪い評判が流れた実績のある俺だ、今更爪弾きにされても大した事はない。
「……は、」
右から左へ、下から上へ。果たして大腿や背中の分厚い筋肉から欠損部位へ。肉が肉を犯して生気を孕めば、体内は勝手に筋膜を張り直して定着と癒着を始める。今より酷い欠損が生じた場合は更なる『型』を扱う必要があるが、一先ず今回はこれでいいだろう。
(……大切な人達のために命を惜しまず尽くす事が、俺に出来る唯一の道だ)
竈門に斬られた胸元の一文字傷を、脹脛の剥離を、左掌の擦過傷を、風柱殿が投げた峨嵋刺の刺し傷を、岩軀の膚による肉体全体の崩壊を、その尽くを自己再生し終えた頃の俺の身体は、不可視な領域で極めて僅かに縮小していた。
等価交換の原則というものである。鬼共と違って無から有は生み出せない。所詮人間の俺は、有を代償にしなければ有を得る事が出来ない。その為に必要以上の筋肉を蓄えていたから問題は無いけれど、蟲柱殿の体格を下回るような事態が起きた場合は途端に俺自身の、正確には鬼殺隊士としての価値が無くなる。
(……)
『空蝉』の使用に条件が有るからだ。器となる己の肉体より体格が小さき者達の呼吸ならば難なく扱えるが、その逆は絶対的に無理だった。つまり尽の呼吸で身体が縮み過ぎれば、問題なく扱えていた呼吸に対応出来なくなる齟齬が生じてしまうのだ。

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