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日章旗のデューズオフ

第1章 ライナー&ジャン(進撃/104期)



「家族と言われて、嬉しかった。私も家族のためならなんでもする覚悟がある。……ので、貴方の気持ちがわかった。そういうことなら私はもう貴方を疑ったりしない。悪かった、とても失礼だった」

マフラーを細い指先で押さえながら会釈したミカサちゃんの黒絹がしゃらりと頬を滑り落ちて机上に着地した。見えなくなった笑みも伏せられた睫毛の加減で依然と窺える。凄い、これが美人の底力。

*****

色々あった朝食もなんとか無事に終え、後片付けはアルミンくんとアニちゃんがかって出てくれた。何故か機嫌が悪いライナーくんがベルトルトくんにヘッドロックをかましていた脇で、アニちゃんが静かに挙手していた姿はきゅんときた。
アルミンくんと並べば二人ともお人形のようで可愛らしさが際立つ。日本にいるだけでは滅多にお目にかかれない本物のプラチナブロンドがそこに存在していることが未だに信じられなかった。
なに、とぶっきらぼうにぼくの視線を鬱陶しがって耳に前髪をかけ直す姿も目を見張るほどさまになっていて、改めて感嘆の声が洩れる。でも流石にそんな態度が続いて苛立たしかったのか、彼女にしては荒々しい声で叱られてしまって。
片付けも済ませれば、昼過ぎまで時間が空く。本来は眠っているつもりでいたから特段の予定はない。もう一度眠ってしまおうかとも思ったけれど、部屋に戻る途中で中庭を窺った時に、誰がしてくれたのかご丁寧に布団が干されていて惰眠も叶わない事を悟った。

「是正」

中庭を一望しながら額を押さえて唸っていると、仏間の襖からひょっこりと顔を出したジャンくんが手招きをしている。北向だから昼間でも電気をつけて良いと伝えていたのに部屋の中は真っ暗だ。電気の付け方も教えていたのに、彼に限って忘れるとも考えにくい。
不思議に思っていると、ふいに仏間から懐かしい香りがする。白檀だ。線香が焚き上げられる静かで厳かな、悲しい香り。火の使い方は教えてなかったけれど、どうやら元の世界にもマッチはあるみたい。仏壇用の火鉢に一本の小枝が刺さって煙を上げている。
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