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日章旗のデューズオフ

第11章 【捌】悲鳴嶼&宇髄(鬼滅/最強最弱な隊士)



膨らんだ風船が萎むように、厚い背がゆっくりと腰へ沈みゆく様子からして、相当に気を張り詰めていたようだった。ひたすら胸が痛む。事後承諾を捥ぎ取る形で自分なりの意志を貫く算段を整えている立場としては、罪悪感が刺激される姿だ。
「名前、よく決断してくれた。では――」
曰く、このまま修行場へ移動し、先ずは後輩達の呼吸を見ること。空蝉に仕込む呼吸の状態は使用者の最大力量である大前提を満たす為、手合わせをして全力を引き出すこと。柱稽古を中断してまで手を貸す彼らには、改めて他対一の高度な戦闘を経験させることも目的とする。
次に柱の呼吸を見ること。柱は効率を加味して二対二の模擬試合を行い、その様子を詳らかに観察すること。組み合わせは以下の通り。一試合目は『蛇柱と恋柱』対『水柱と蟲柱』。二試合目は『霞柱と炎柱』対『風柱と岩柱』。
(良く先の今で、風柱殿と組もうと思うよなぁ)
悲鳴嶼の肝の据わりように嘆息する。しかし合理的だと納得もした。風柱殿から一番近い場所で戦えば、彼が暴走した時に仲裁の手間が省ける。それに、団結の時機を見誤れば今後に関わるだろうとは霞柱殿も危惧していたところであったし、協調性を重んじての事かもしれない。
「直に日の出です。早いところ参りましょうか」
大筋の予定を静聴し終えた柱達は、蟲柱殿の促す声に賛同するように手早く日輪刀を引き掴んで腰を上げた。即座に腰ベルトへ鞘を通す者や悠長に肩へ担ぐ者と仕草はまちまちなれど、知己同士で雑談を交わしながら続々と広間を辞して行く。
最後尾の水柱殿に続こうと膝を立てたところで、天元が無言のまま引き止めてきた。或いは再び手を貸せという意味なのかもしれないが、座す時よりも肩を鷲掴む力が強かった。仕方無く元の姿勢へ戻る。
「竈門、そいつら連れて先に行け」
「一緒に行かないんですか?」
「名前と後から追う。一度座っちまうと直ぐには立てねぇ」
「それなら手伝います。遅れたら大変だ」
「ッは。この宇髄様が遅刻なんざするかよ。俺達の脚ならお前らが修行場着く直前に邸を発っても余裕で間に合うわ。先越されたくなけりゃ、さっさと行くんだな」
「……分かりました。行こう、二人とも」

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