【ONE PIECE】 淡く、儚い、モノガタリ 【ロー】
第1章 始動。
「…………っ!!?」
辛そうな表情で、目を逸らした。
ついさっき、知り合ったばかりの人間に、彼はこんなにも悲しい顔をするのか。
とても感傷的な人なんだと、知った。
ローには、痣のことをすべて、正直に答えた。
顔に表情を出さず、たんたんと、話す。
「幼い頃に、天竜人に捕まったの。そこで、酷い暴力をされて、そのせいで体中傷だらけ。ある日、実験体にされて、病原菌を腕に、…点滴で流し込まれた。それで、こんな気味の悪い痣ができたの」
彼の表情が、だんだんと変わっていく。
哀れんでいるような表情から、だんだんと…瞳の奥に怒りを帯び始めた。
私は、悪魔の実を食べたことで、『影』の能力者になったこと。
その脳力を使って、私に暴力を振るってきた天竜人を、殺めたこと。
「ねぇ、ロー…、私は人殺しなんだよ…?」
「…あァ、」
「私は…ここにいちゃ────」
「うるせェ。…そんな小さいこと…、」
ぐずぐず言ってんじゃねェ。
ぐっ、と腕を引かれて、抱きしめられる。
彼の身体は震え、喉の奥からうっ、と何度も呻くような声が聞こえた。
ローが、グッ、と何かをこらえていることが分かる。
そしてそれは、私を思ってのこと、ということも。
「お前は、俺の傍にいればいい…っ、」
「……うん、」
「居ちゃいけねェなんて、そんな理由なんかねェッ!!」
部屋中にローの声が響いて、窓がビリ…ビリ…と、音を鳴らす。
ぽろっ、と涙が流れ、それが止まらなくなった。
泣くことなんか、あの檻の中で、ずっとしたことがなかった。
そんなこと、許されなかった。
(でも、此処では…、)
泣いてもいいんだ。
今日一日で、2回泣いた、泣きはらした。
泣いた時にはいつも、彼が抱きしめてくれていた。
―温かい―