第1章 デートの後で…
ああ、胸が苦しい。
よりにもよって鎌先くんに恥ずかしいところ見られたくなかった。
でもこうやって会えて嬉しいとも思う。
きっと私は鎌先くんに恋してるんだろう。
だからこんなに胸が苦しいんだ。
「…おい、本当に大丈夫か」
「大丈夫、大丈夫だよ?」
「そうか? なんかぼうっとしてっからよ……どっか変なとこ打ったかと思って。顔面で受けたもんな、今」
「お恥ずかしいかぎりです」
わざと明るく笑って、恥ずかしいのを誤魔化そうとした。勢いのあるボールじゃなかったし、普通の人だったらすんなりキャッチ出来ていたはず。
「…って、運動苦手なのな」
「あはは、実はそうなの」
「そっか。でも偉いな、ここんとこ毎日練習してんだろ。休み時間とか放課後とか」
「えっ、なんで知ってるの?」
「あっ……いや、その……た、たまたま見かけてよ!そうそう、たまたまな! ほら俺は体動かすの好きだから、昼休みよく外出てるし?!」
どこか慌てた様子で鎌先くんがそう言った。鎌先くんに醜態を見られていたことを知って、顔から火が出そうなほど恥ずかしくなった。まさか今までの練習を見られているなんて思いもしなかったから。
「見られてたんだ、恥ずかしいなぁ。酷いでしょ、私の運動神経。鎌先くんバレー部だし余計にそう思うんじゃない?」
そう言ってから、返しに困ることを言ってしまったと思った。私が運動音痴なのは事実だけど、面と向かって「そうだな」なんて言える人はあんまりいないだろう。鎌先くんに変な気を使わせてしまう……。
「んー……なんか、惜しいって感じするんだよな」
「えっ? 惜しい?」
「うん。だってお前、ボールの落下地点には居るんだよ。後はボールを受けるタイミングさえ合えば、ボールは拾えるんじゃねぇか?」
確かに、鎌先くんの言う通り、ボールが落ちてくる場所で構えることは出来ていた。でもタイミングを合わせられないから、さっきだって顔面でボールを受けてしまったんだけど。
鎌先くんに「惜しい」って言われたら、なんだかあとちょっとで出来そうな気がしてくる。自分でも現金な人間だなぁと思う。
「よかったら、俺練習付き合うぜ」
「いいの?」
「おう!」
「じゃあ、お言葉に甘えようかな。鎌先くん、お願いします!」