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紅の君
第3章 関ヶ原
年千あまり六百、
神無月の二十日あまり一日の日。
未の刻すぎ、茂る森を走るは島津が紋。
時、天下分け目の関ヶ原なり。
島津が紋背負い立つる
紅の甲冑を纏ひし男居たり。
其の男の隣に、いと小さき影ありけり。
その二人、敵の首を罷り取ること鬼の如し。
あまたの武士共もまた狂いけり。
眼を開かせ、絶叫す。
敵将其の姿を見れば戦慄し、引け戦きたり。
紅の甲冑、
名をば島津中務少輔豊久となむ言ひける。
また、小さき影、
名をば島津中務大丞久忠となむ言ひける。
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