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紅の君

第6章 エルフの村


野風と信長が廃城に帰ってきた。

すると豊久は少し機嫌が悪く、膨れていた。

それに野風はいの一番に気がついた。

『豊久様?どうなさいましたか?何かご不満

でも・・・・?』我が主の膨れっ面におろおろと

狼狽える。しかし信長は意地の悪い笑を

浮かべつつ言う。

「なあに、心配するな!こやつはただ久忠が

しばらくの間わしと二人きりだったのに腹を

立てておるだけだて!のお?豊久?」

その声を聞いた途端豊久は更に膨れる。

「応!そうじゃ!なんで怪我人を長(な)げ間

連れっいく!?久忠は怪我人だぞ!?

も少(ちっ)としおらす(優しく)扱え!」と憤怒を

爆発させた。この主は自分の心配よりも一等

大切な家臣の心配をする。野風はくすりと

小さく笑い、己の主をなだめる。

『豊久様、御心配なさらずとも私の平気です。

信長様と与一様が怪我を手当して下さいまし

たから・・・』

「そげなこっではない!お前(まあ)は怪我人

なのじゃっで横になっておけちゅうことだ!」

『ならば、豊久様は大怪我人で御座います。

豊久様こそ横になられていた方がよろしい

かと・・・』

家臣に言いくるめられる主を見て信長と与一

は笑う。

「見事に言いくるめられましたな豊久殿。」

「全くじゃ!久忠は口八丁じゃの!丁度良い。

皆で休もう。これ以上怪我人を騒がせる訳

には行かぬわ。」

信長の声に皆頷く。そして各々大きな布を

掛けて寝支度をし始めた。

「久忠、こけ(ここに)来い。」豊久が指す

“ここ”とは己の隣を指していた。久忠はまた

顔を紅に染める。

『い、いけません、豊久様!恐れ多く

御座います!主の側で寝るなどと・・・』

「なんじゃあ久忠!

まあた恥(げん)なせすっのか?

気にすっこっはない!隣で寝っちゅうこちゃ

そしこお前(まあ)を信頼しちょっちゅうこと

だ!こけ来い!の?」

確かに明の国の方では家臣と同じ布団で眠る

事は信頼の証だと書いてあったが、流石に

日の本の武将で、一応男と女なのだ。

あれこれ考えてるうちに豊久はしびれを

切らして久忠の腕を引っ張り強引に己の

腕の中に久忠の小さな体を収めた。

久忠は最初こそ慌てたものの、豊久の

温もりに少しづつ瞼を降ろし、眠りに

ついた。
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