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紅の君

第4章 廃城


小鬼二人と共に豊久を担いで行くと廃城と

思われる場所に辿り着いた。小鬼の一人が

その廃城を指差した。あそこに行けということ

だろうか。ともあれ、小鬼二人には世話に

なった。礼を言わねばならないと思い、久忠

は屈み、地面に頭をつけた。

『ありがとう御座いました。』

《********!*****》小鬼たちはとんでもないという

ような素振りを見せながら足早に立ち去って

行った。小さき影は再び豊久を担ぎ、廃城を

目指した。しかし、

「止まりなされ」と、突然声が落ちてきた。

上を見るととそこには人が居た。全く気配が

なかった為、久忠は動揺を隠せなかった。

「何者か。答えられよ。」髪の長い青年は

弓を引いて臨戦態勢をとっていた。

久忠は慌てて名乗る。『島津久忠と

申します!こちらは主である島津豊久様に

御座いまする!日の本の武者で、島津家の

者で御座います!我が主、豊久様が

大怪我をしていらっしゃるのでどうか

御力添えを賜りたく参りました!』

「なるほど・・・」ふむ、と弓矢の青年は考える。

すると廃城の廃城の中から声がけ聞こえた。

「何事だ。」低く、それでいてよく通る声。

「日の本の武者と名乗る者共がやって

参りました。一人は虫の息で、もう一人は

意思疎通が出来ています。」

「で、あるか・・・ろくな薬もないが手当て

してやれ。命と運が強ければ生きるであろう」

『有難うございます!感謝致します!』

「さ、その者を中へ」髪の長い青年が中へ案内

してくれた。

廃城の中にはこれは又髪の長い者が居た。

歳は五十路前後といったところだろうか。

『御力添え、感謝致しまする。』

久忠は改めて礼を述べた。すると

五十路前後の者は「良いのだ良いのだ」と

返してきた。ふと彼の後ろを見ると織田家

の木瓜紋が掲げられていた。

『貴方様は織田家の者で御座いますか』

「応よ。俺が織田で、織田とは俺よ。」

『・・・お名前をお聞きしても・・・?』

「・・・俺は信長、織田前右府信長である。」

『・・・・・・・・・はい?』

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