第3章 関ヶ原
久忠が意識を取り戻すとそこは
見知らぬ平地だった。
穏やかな時間が流れ、彼と豊久が居た
関ヶ原でも、先程の白い通路でもなく、
どこか異国な雰囲気があった。
『此処は・・・?』疑問に思った久忠は直ぐに
傍らに倒れている主に気がついた。
『っ!豊久様!豊久様!目を開けて下され!
豊久様ぁ!』
辺りは彼の少し高めの声で包まれた。
「・・・っひさ、ただ・・・だいじょっか・・・?」
『私は大事ありませぬ!それよりも貴方様の
お怪我の方がっ・・・』と言いかけたところで
久忠は足音を捉えた。
人数は二人。歩調は慌てておらず、ごくごく
普通の歩調。金属音はしないため兵士では
ない。布のこすれる音のみ。一般人だ。
しかし此処は見知らぬ土地。何があるか
分からない。久忠は両手をそっと
腰にある脇差に添えた。
目の前に現れたのは子供であった。
しかし少し、いや、だいぶ変わっている。
耳が長い。まるで鬼のようだ。
『此処は地獄か・・・?』そう呟かざるを
得なかった。
《**********?****、********!》
しかも訳の分からぬ言葉を話している。
すると豊久が仰向けになる。
それに小鬼らしき二人は驚く。
「ははっ・・・久忠・・・鬼だ・・・
やっぱり地獄行きか・・・」
そう言い終え豊久はまた意識を手放した。
『・・・っ!豊久様!』
《*******?********!》
恐らく心配をしているのだろう。
そして何やら議論している。
すると一人の小鬼らしきものが豊久を
起こそうとした。何処かへ運んでくれる
のだろうか。ならば協力せねば。
『わ、私もお手伝いします!』
慌てて主を起こすことに加担する。
小鬼たちは久忠の存在に恐れながらも
敵意がないことが分かると落ち着き
を取り戻した。
すると一人の小鬼が遠くを指さした。
指差す方向へ向えということだろうか
とりあえず指さした方へ歩を進めると
小鬼たちは黙々と歩き始める。
『豊久様・・・もう少しの辛抱で御座います!
お気を確かに!豊久様・・・!』
久忠は運ぶ最中しきりに抱える己の主に
声をかけ続けた。どうか目を開けてほしい。
死なないで。と切に願いながら。