第3章 第3セット。
「福ちゃん? 今日、グラタンでいい?」
玄関の鍵を開けて彼の表情を見る。パァッと明るい顔になって何度も頷く。よかった、いつもの福ちゃんだ。
「昨日のうちに仕込んでおいたんだー。」
台所のエプロンを着てお夕飯の準備を始める。
福ちゃんにはソファでゆっくりしててもらってるけど、なんとなく上の空な状態。
「福ちゃーん?」
あとは焼くだけにした状態でオーブンに入れてセットする。その間、サラダや副菜を作り終えた私は彼に近づく。
いつもなら視線を合わせてニコって笑ってくれるのに、どうして見てくれないんだろう。
「ねぇ、福ちゃん!」
隣に座って顔を覗き込む。するとビクッとしてようやく私の顔を見てくれた。
「・・・・・れいな」
「どうかしたの?」
眉をひそめてる福ちゃんの頭を撫でて聞いてみる。
そんな顔見たくないのに。
「れいな」
すると私の手を握って、勢いよく引き寄せる。
彼の胸元に飛び込むような態勢の私を優しく包み込む福ちゃんの肩が小さく震えてる。