第12章 消えた
試合開始。
高らかに鳴るホイッスルと、それと同時に跳ぶ巨体。
彼が消えるのはまだだ。
メーターがまだバンバン見える。
なるほど・・・黒子くんはあと80年も生きられるのか。
長生きだな
くだらないことを考えている間に、すっと色が薄くなっていくメーター。
おっと危ない。
見失うところだった。
『(なるほど・・・存在感を消すと同時に、メーターまでもが薄くなるんだね)』
これは新発見だ。
彼は本当に才能がある。
すべて・・・自分のすべてを消そうとしている。
そこまで考えて、ハッとする。
ボールが急に軌道を変えたのだ。
まぁ、見えている私には見えるんだけど、黒子くんを見失ってしまった人達は言葉を失う。
それは、赤髪の彼も一緒で。
きれいな紅の色をしている瞳が、大きく開かれた。
存在感を消すだけじゃない。
それだけじゃボロが出る。
だから彼は気がついた。
──僕は影になる
影になるためには光が必要。イコール、その光を自分以外の選手達にすることで成り立っている。
そして、影になるための一瞬。
視線誘導を行う。
もうそれで、普通の人間なら見失う。
影になった彼を見つけることは難しい。
『・・・最高の少年だよ。黒子くんは』
【赤司】
「・・・わかっていたんだね?」
ぎくりとした。
聞かれてたのか・・・
『・・・なんのこと?』
【赤司】
「前言ったこと、前言撤回しよう。
はちが考えていることが、時々分からなくなる」
『え?』
【赤司】
「・・・きみは、これから俺たちがどういう運命を辿るのかも知っているのか?」
なんて返せばいいか分からない。
紅の色をしている瞳が、次は私を映していた。
『・・・わたしは』
【赤司】
「・・・・・・なんてね。緑間風に言ってみただけだ。・・・似てたか?」
『・・・あ、はい。似てましたはい』
そんなドヤ顔で言われても。
今度は別の意味でどう返せばいいかわかんないよ
言ってることがシビアすぎて笑えないんですよ・・・
赤司くんとおふざけは相性最悪らしい。