第9章 あの人の大切な人
───虹村side─────────┐
驚愕、以外の言葉が見つからねぇ
こいつは・・・誰なんだ?
いつも一緒に居たはずのはちが、別人にしか見えない。
「・・・お前、は・・・誰なんだよ?」
振り返る。
それすらも情けないが怖く感じた。
頼む、こっちを向かないでくれ
今、おまえの眼を見ちゃいけねぇ気がするんだ
【はち】
「・・・私は、三井はちに決まってるでしょう?
『修造先輩』」
──心臓を鷲掴みにされた気分
いつもあんなに、うるさいほど明るい笑顔が・・・今は冷たい大人の眼をしている。
笑っているはずなのに、温かい笑顔じゃねぇ
絶対的自信をその身から溢れ出させている、『三井はち』だった。
「・・・お前、」
一瞬、はちの体がぐらついた。
支えようかと思ったが、動き出す前にそれは治る。
【はち】
「・・・どうでしたか? 私の眼!」
さっきとは違う
いつものあいつ
「・・・どうって、本当のことなのかよ」
【はち】
「本当だと思います。
少なくとも、あと5年はピンピンなはずです」
「思いますとか、はずですとか信じられねぇんだけど!?」
動揺が気づかれないように、あえて平静を装う。
なんせ・・・今の短時間ではちが二人居た・・・気がするんだからな
今のお前は・・・どっちなんだ?
【はち】
「ちょ、虹村先輩! 信じてくださいよ!」
今度こそ、その眼を見開いた。
今こいつ・・・『虹村先輩』って言ったよな?
てことは・・・今のお前はいつものお前か?
・・・・だぁぁぁあ! くそっ
わっかんねぇ
お前は・・・何者なんだよ・・・