第41章 どうしようもなく好きだったから。
《───あのな、はち。》
『!!!』
涙をこらえて瞑った目蓋の裏で、
父さんがこちらを振り向く。
《・・・残す方も、辛いんだぞ。》
『っ!!』
その目は哀しそうに微笑んでいて、
大きな手が伸びてくる。
いつの思い出だろうか。
こんな思い出、あっただろうか。
《母さん、辛かったぞ。絶対》
そう告げて、グシャグシャに撫でられる。
その目は、やっぱりあの人に似てて。
飛び付きたくなった。
でも、届かない。
動かない、声が出ない。
そのうち、お父さんは手を離し
わたしから目を背けた。
その瞬間、
堪えていた何かが
ぶわっと溢れ出した。