第34章 平行
黙って、黙って、だまっていた。
続き
《俺、お前がいなくなったあの日から、決めてたんだよ。
もう一生、遠慮なんてしねぇって》
どこかで聞いたことのあるような言葉
きっと、話してくれたんだろう
《だから、もう、おまえを手放したくない。
何がなんでも隣にいて欲しい。
だから、》
その瞬間。
ふわり、と。
後ろから何かが覆い被さった。
《───もうお前に、怖い思いなんてさせない。ひとりにしない》
ゆっくりと、何かが迫ってきている
でも、香りでわかる。
昨日の夜、何度も何度も感じた香り。
何度も何度も感じた温もりが、また。
《好きだ》
繋がった唇から、伝わってくる
昨夜、何度も何度も交わしたはずなのに、まだ慣れない
でも、安心する
『ん──』
携帯から耳が遠ざかる
携帯を持っていた手を掴まれ、シーツの上に転がる携帯。
いつのまにか通話は切られており、なにも聞こえてこない
赤髪が視界を埋め尽くして、それきり。
赤に染まる、それだけだ。
怖くない、ひとりにならない
もうあの頃みたいに───
【赤司】
「・・・はち、
どうしようもなく好きなんだ」