第32章 抑えられない
──虹村side───────────
腕の中でぐったりとしているそいつに、俺は何度も呼び掛けた
だけど、応答してくれる訳がなくて
「おい!!! はち!!!」
こういうのに免疫がねぇ俺は、何もできずに叫ぶだけだった
・・・熱はない・・・
なら、寝かせておけば楽になるだろうか
そうすれば、治るのか?
「・・・・・・っく・・・ッ」
前も、こうだった
夢がどこかに行ってしまったとき、俺はただ荒くなるだけだった
そうするしか、方法がなかったから
でも、こいつは言ったんだ
───『そんなんで、優しい言葉をかけられるんですか』って
むりだ、って直感的に思った
でも、その懇願するような目が、俺を見損なったような笑顔が、急激に頭を冷やしてくれた
そのとき、思ったんだよ
お前がいなきゃ、俺はなんもできねぇかもしれねぇって
・・・そんなの、情けないだけだけど
でも、そう思えるくらい、俺にとってお前は───
「大事な奴なんだよ・・・────」