第31章 黒の憂鬱
「・・・なんで、そんなこと、言うんですか・・・?」
黒子くんの声が聞こえて、顔を上げる
───泣いて、る・・・
黒子くんが、泣いてる
「僕は・・・
はちさんがいたから、
はちさんが優しくしてくれたから、
はちさんが手伝ってくれたから、
はちさんが一緒にいてくれたから・・・
だから、」
『・・・黒子、くん』
初めて見た、泣き顔
この人は泣かない、ってどっかで決めつけてた
でも、
黒子くんも、私と同じだった
「・・・だから、憂鬱だった日々も楽しかった
大好きなバスケがあったから、それをはちさんが繋いでくれたから、みんなと一緒にバスケができたから
・・・そんな何気ないことが、幸せでした」
涙が頬を伝う
それは、
目が乾いているから?
びっくりしているから?
黒子くんの言葉に、感動したから?
・・・黒子くんの言葉が、嬉しかったから・・・?
───きっと、それだ
涙もろいな私
黒子くんは、そんな私の涙を拭ってくれた
大きな手
この手で、みんなにボールを繋いでる
すごい手なんだ
「・・・だから、そんなこと言わないでください
何がそんなに悲しいんですか?
これからの僕らが不安ですか?
・・・信じてください」
・・・僕らも、はちさんを信じてるんですから
───きっと、この言葉は、私の涙の意味と噛み合っていない、と思う
でも、それでも、
───心のどこかに、ずっしりと、さくっと、突き刺さったんだ
その心地よさを、多分わたしは、ずっと
忘れない気がした