第30章 紫のお菓子
『・・・う~・・・
紫原ごめんねー・・・重いでしょ?』
ぜーんぜんー
こんなの、重いの内に入んないしー
「んー全然大丈夫ー」
『そー? ありがとうねー・・・
・・・あいててて・・・』
背中に感じる温もりはきっと、今までこの人生で感じてこなかった温かみ
誰かの温もりを感じる日が来るなんて、思ってみなかったのにー
『・・・紫原ー』
「なにー」
自分から話し出したくせに、はちちんは喋ろうとしない
なんでだろー?
それから待つこと数分・・・数秒?
まーどっちでもいっかー
全然、話し出さない
「・・・はちちーん?」
『・・・あ、ごめんごめん
・・・えっとね・・・』
「?」
なんだろー?
そんなに話しにくい事なのかなー
「・・・なんでも言っていーよー」
『・・・うん、ありがと』
『えっとね』
『・・・寝てもいい? その・・・肩借りて』
「・・・・・・・・そんなこと?」
『なっ・・・そんなことじゃないでしょ!?
・・・重いからムリーなんて言われたらどうしようとか思ったし』
そんなこと、別に訊く必要なくねー?
「ん、寝ていいよー
着いたら起こすし」
『ありがとー・・・』
って言いながら寝たしー
どんだけ疲れてるんだろー
「・・・赤ちん、それ重い?」
【赤司】
「・・・ん?
まぁ、多少は重いかな」
赤ちんでも『重い』って言ってるんだから、はちちんだったらもっと重いのかな
いつも、そんなに重いもの運んでたのかな
・・・なんで、頼ってくれなかったんだろう
・・・俺だって、少しは役に立ちてーしー
それに・・・
はちちんのためなら、少しは頑張れるしー
そこまで考えて、我に返った
俺、なに考えてんの!?
なんか変人みたいでヤダー
変人はみどちんだけで充分だしー
背中にかかる重み・・・そんなに重くないけど・・・確かなその重みは、俺の中の何かを確実に揺らした
軽いものは、やっぱりお菓子だけでじゅーぶん
たまには、こーゆーのを背負ってみてもいいかもしれない
・・・はちちん以外は却下だけど
あ、桃ちんはセーフ
誰かに頼られてほしいのが、人間の性(さが)なのかなー