第27章 黄の心
夏祭りのとき、俺はまだはちっちと出会っていなかった。
イコール、この世界には居なかったってことだ。
・・・なんで?
驚いてはちっちを見ると、目を見開いて口を引き結んでいた。
「は、はちっち・・・?」
『え、あ、今のっ・・・今のはなんでもないよ!
ま、前誰かに・・・、そ、そうさつきちゃんに教えてもらって!』
なるほど。
そーゆーことか
「そうだったんスね!
あの時も楽しかったんスよ~」
『う、うん!聞かせてもらった!』
少しでもはちっちを疑問に持った自分がバカらしい。
でもなんか・・・
・・・はちっちって、謎があるッスよね
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花火が打ち上がるまでまだ時間があるみたいだから、神社のおみくじを引くことにした。
『ここら辺は人少ないね』
「そうッスねー
ささ!早く引いて見ようッス!」
強引にはちっちの腕を引いて、鳥居へと向かう。
あった!あれがおみくじか
『・・・・・・・うっ』
「はちっち?どうしたんスか?」
『・・・・・・・小吉』
「えっ」
死んだ魚のような目で俺を見てくるはちっちが小さく見える。
「しょ、小吉でも凶よりはいいんじゃないッスか?」
『・・・涼太くんはなんだったの?』
「俺は大吉ッス!やっぱついてるッスよ今日は!
なんせはちっちと花火大会来れてるんだから!」
『ははっ、大袈裟~』
おみくじを財布にしまって、辺りを見渡した。
「・・・そーいや、はちっち」
『ん?』
「──『涼太くん』じゃなくて、呼び捨てがいいッス」
「────えっ」
ザァァッと風が吹いた。
はちっちの目に星が映って見えた。
『・・・いいの?』
「だって、なんか『くん』付けって嫌ッスよー!」
『じゃ、じゃあ涼太だね!
─────ありがとう!!』
・・・───ああ、
やっぱり。
俺、この笑顔が好きなんだ。