第26章 父さん
『─────ま、
──────ってぇぇぇええええええ
ええええええええ!!』
ドゴォォォンと、重たい扉が開く音。
今まさにその扉を開けようとしていた父さんは、目を見張っていた。
「───・・・はち」
その名前を口にするだけで。
どうしてこんなにも、切なくなるのか。
どうしてこんなにも、嬉しくなるのか。
俺はまだ、分からないことがたくさんだった。
【赤司父】
「・・・どちら様で?」
『赤司征十郎さんと同じ部活に所属・・・してます。
三井はちです。』
丁寧に自己紹介したあと、深々と頭を下げる。
すると父さんは、『部活』という単語が気になったようで。
【赤司父】
「・・・お前、まだバスケットボールなんてやってるのか」
「────!!」
・・・いや、こんなに驚くことでもないな。
知っていた。
父さんが、部活・・・バスケットボールを拒否していることは。
でも、受け入れるのが怖かった。
だから、今の今まで何も言わずに過ごしてきた───けれど。
やはり───父さんは俺の何もかもが嫌なようだ。
だが、こんな家の大黒柱に嫌われたところで、
『───いい加減にしてください』
低く、いつもの彼女からは想像もつかない声。
そのかわいい顔からは想像できないトーンに、父さんは僅かながら目を見開いた。
『そんな言い方、ないじゃないですか・・・
わかってるんですか?自分のいってること』
【赤司父】
「・・・文武両道、それも大事だが、それではやはり何かは疎かになってしまう。
それはこの家系では許されないものだ」
『────アホッ!!』
瞬間、父さんの頬に何かが食い込んだ。
それはまさに──はちの掌。
『家系とか、許されないとか、黙ってればぺらぺらと・・・
赤司征十郎は、あなたの人形じゃないんです!!!!』
───あぁ、やはり彼女はすごい。
俺が言えなかった言いたいことを伝えてくれた。
それだけで、心の何かがすっと消えていく感じがする。
でも・・・手を出すのは少しまずいかもな、はち。