第26章 父さん
・・・・やはり、父さんには何を言っても響かないのか
ただただ冷酷な目でこちらを見つめ、口をつぐんでいるだけ。
まるで、こっちを悪者にするかのような目だった。
【赤司父】
「・・・いつからお前は、そんな口を利けるようになったんだ」
「──!!」
【赤司父】
「分かっているのか?
この家は普通の家庭とは違う。
由緒正しく受け継がれてきたこの家の歴史を、お前は覆そうとでもいうのか?」
「そうじゃない、俺は・・・」
【赤司父】
「お前が言っているのはそういうことだ。
お前はこの家にふさわしいように生きていくだけなんだ。
それが、赤司征十郎。お前だ」
───ふさわしい・・・?
それじゃあ、俺は何者なんだ?
自分の生きたいようにも生きていけず、親のレールの上を歩くだけ。
そんなもの、誰にでも出来ることじゃないか────
「───やっぱり、父さんの言っていることはくだらない」
【赤司父】
「・・・親に向かって、」
「親とかそういう問題じゃない!
子供と親の関係じゃない!!
俺は一人の人間・・・赤司征十郎として、父さんに訴えているんだ・・・
頼むから・・・聞いてくれ・・・」
懇願。
たとえみっともなくたって、赤司家の者として情けなくったって、構わない。
こんな、堅苦しい世界の中心にある家なんて、望んでない──。
【赤司父】
「・・・・・・・・征十郎、」
低く、冷たい声。
後退りそうになる。
足がすくみそうだ。
内心、怯んでいる。
だが、こんなところで逃げるくらいなら最初から来ない。
【赤司父】
「・・・一度、頭を冷やすんだ。
それから、自分がこれからどうすればいいか、考えろ」
コートを手に持ち、出入口へ向かう父さん。
待ってくれ、そう言いたい。
でも、さっきの威勢の良さはどこへ行ったのやら、声が出ない。
これじゃあ、何も変わらない・・・
父さんの俺に対する期待度が下がっただけだ。