第25章 赤の心 part 2
【虹村】
「───ゴラァ! 赤司ィ!!」
「!!!」
『ぅえ!? にじむー!?』
保健室の扉を勢いよく開ける音が響いた。
少し扉の形が歪んでいる。
【虹村】
「なんか話してるかと思えば、ベッドが軋む音はするわ・・・
何やってくれてんだよ赤司!」
「あの、虹村さんも空気を読んでみてください」
『そうですね。先輩は時々空気読めなさすぎ残念イケメンになります』
【虹村】
「イケ・・・っ!?」
『反応するとこそこじゃないです』
なんだか話の軌道がずれてしまったが、仕方ない。
この話を終わりにするいいタイミングだ。
こんな話、もう聞きたくない。
みんなが──バラバラになる話なんて・・・
【虹村】
「話、聞いてたぞ。
・・・そんなみっともねー結末、変えてやろうじゃねーかよ」
口を尖らせて仁王立ちする虹村さん。
終わりには、させてくれないんですね・・・
『──終わりにしないでよ・・・──
お願いだから、向き合ってよ
受け止めてよ。受け入れてよ・・・
逃げるんじゃなくて、止めようよ』
「──・・・ああ、そうだな」
なぜだか、最近涙が出てきそうになる。
今もそれを堪えているつもりだったが、無理だったらしい。
驚いているふたりの顔を見て、分かった。
俺は今───泣いているんだな
『───・・・貴方は、優しいね』
《───貴方は、優しいわ》
「──!!!」
幼き日の記憶が蘇る。
あの頃は無邪気になんでも母に話せていた。
テストで満点を取れたこと。
捨て猫に毛布をかけてあげたこと。
友達が喧嘩しているところに入って、止めたこと。
バスケが───とても楽しいこと。
それらを母に話すと、いつも決まって言われる。
《───貴方は、優しいわ》
それが、とても嬉しかった───
『──!!』
【虹村】
「! おいっ・・・」
「───・・・ありがとう、はち」
今、その言葉がお前の口から聞けて、これ以上なく幸せだ