第25章 赤の心 part 2
────はちの、勝利だった。
誰もが唖然とする。
それはそうだ・・・
未経験者、といってもいいほど上手くはないはちに、今最高潮にゴール数が多い青峰が負けた。
信じられなかった。
青峰は、目を虚ろにしている。
汗の量は、はちの方がかなり多いが、青峰も普段より多く汗をかいている。
『──っはぁ、はぁっ・・・!
──────ッ!!』
はちが膝から崩れ落ちた。
それを受け止めたのは青峰。
瞬きをするよりも速く、はちの元へと辿り着いていた。
『──はぁっ・・・、やっぱ・・・きついね・・・』
【青峰】
「・・・あたりめーだろ・・・バカ」
ガクガクになった彼女を、壊れ物を扱うかのように抱きすくめている。
───・・・KYで悪いが、やっぱりモヤモヤする。
はちが他の男に抱き締められているところを見るのは、いい気分ではないな
「・・・青峰、はちを預けてくれないか。
保健室で休ませよう」
【青峰】
「・・・ああ。頼んだ」
もう酸欠状態になっているはちを横抱きし、小走りで体育館を出た。
『────ん・・・』
「気がついたか?
・・・調子はどうだ?」
連れてきている間に寝てしまったらしく、ベッドに寝かせる頃にはぐっすりだった。
『ん、もう大丈夫。ありがとう』
「どういたしまして。
・・・訊いてもいいか?」
『ん・・・?』
───どうしてあんな無茶をした?
そう訊くと、はちは俯いてしまった。
なにか、やっぱり知っているんだろうか
「責めているわけではないんだ。
ただ、理由が聞きたいだけなんだよ」
ポツリ、ポツリと、声が聞こえてくる。
普段の彼女からは想像つかない、なんとも弱々しい声だった。