第25章 赤の心 part 2
『・・・青峰』
【青峰】
「あ? ・・・んだよ、はちか。
何の用だ?」
数日後、久しぶりに部活に顔を出した青峰に、はちは声をかけていた。
だが、瞬きをするよりも一瞬。
俺は見てしまった。
───はちの目の色が、片目だけ琥珀色になっていたのを。
『───私と、1on1やろうよ』
【青峰】
「──・・・は?」
『拒否権なんてあるの?ないよね・・・?
──じゃあ、やろうか』
【青峰】
「はっ? ちょ、おまっ、待てよ!」
『どうしたの?私の言ってること、分からない?』
【青峰】
「そうじゃなくてっ、おまえ!どうしたんだよ!?」
『私だって、みんなとただただつるんでる訳じゃないよ』
───ちゃんと見てきたから───
ドリブルする音が聞こえる。
そこで、体育館にいる全員が我に返った。
「はち? 正気か?」
『正気じゃないことなんてしない。
私は冗談も嘘も言わない。
私が──絶対だよ』
横目で見られたその目は、やっぱり琥珀色で。
どこか、いつものはちとは違かった。
───キュッ
『・・・くれぐれも、手加減なんてしないでね』
【青峰】
「・・・・・・・いや、でも」
『なに? 女子だからって、手加減する必要ないよ・・・
こんなに挑発してるような女に、手加減なんてしないでよ』
桃井にホイッスルを渡し、はちはボールを手に取った。
【桃井】
「・・・は、はちちゃん・・・
大丈夫・・・?」
『大丈夫。・・・見てて』
────ピッ
ボールが高らかに上げられる。
普通は、青峰に取られるボールが───
「───!?」
───はちの手元にあった。
今思えば、その瞬間から勝敗は決まっていたのだ。