第24章 灰の心 part2
──そいつの胸ぐらを掴んで、見下ろす。
はちの目は変わらない。
ずっと、軽蔑しきっていた。
『・・・・残念。
こんな、自分より弱いやつにも手を出しちゃう人だなんて思ってなかった。
・・・あんた、最低だよ』
その瞬間、目から何かが消えていた。
光?希望?
でも、絶望的な顔なんかじゃなかった。
人を見放すときの、あの冷てェ目。
その時俺は、本当に軽蔑されたのだと悟った。
人間のそんな顔、初めてみた。
絶望的な顔、泣きそうなほど悲しそうな顔・・・そんな顔は山ほど見てきた。
でも、そんな顔はされたことがない
だからか。
何かがぐさりと刺さり込んだ。
手を離して、でもそのままそいつを見下ろす。
プライドはまだ残っていた。
「・・・あー、そーかよ」
『うん、そーだよ』
即答。
それもイラつく。
「ハッ、言いたきy」
『なんでもいいから部活行くよ。
ついてきて』
しかも最後まで言わせない。
それもイラつく。
また偉そうに『ついてきて』なんて言うしさァ・・・こいつマジなんなの
『・・・・・・・・なにしてんの』
「行かねぇよ部活なんざ。
めんどっちぃだけだろ」
『・・・面倒くさいって思うのは、本気でやったことのある人だけだよ。
灰崎は、本気でやったことあんの?』
「本気になんかなるわけ、」
『じゃあ、面倒くさいなんて言わないでよ。
一度でも、本気でやってから言え』
無理矢理、腕を引っ張られる。
その時、気がついた。
こいつの手は、冷たかった。
氷みてェに。
怖かったのか?
そう聞きたかった。
でも、そいつの目からそうは思えなかった。
これが、三井はちって奴なんだと感じた。