第22章 first story
──第3者side─────────┐
虹村の夢。
はちの夢。
久しぶりに会えた。
その喜びが異常じゃない。
【虹村】
(おいおい、浮かれんな俺!)
だが、夢を見たからと言って、はちが帰ってくる訳ではない。
安心できる場合ではないのだ。
だけど、今夜誰かが会いに来るような、そんなワクワク感がある。
こんなんじゃダメだ・・・
部活に集中、集中・・・
─────ガッチャーン!!!!
ブォォォンン!!!! ガンッ!
【虹村】
「!!!?」
突如、体育館内に響いた不協和音。
誰もが目を見張る。
だが、それは淡い期待の色も見えて。
───帰ってきた。
───三井はち、という人物が。
ピアノの上から、だらりと流れるように落ちてくる人影。
それを、虹村はキャッチした。
我ながらナイスキャッチだとも思う。
【虹村】
「───はち!!!」
『・・・・──う、・・・』
手首が痛々しく赤に染まっている。
それを手早く手当てしている赤司。
緑間は相変わらずビビっていたが、少し頬を緩ませていた。
青峰は、脱力しているはちの元に駆け寄り、目を輝かせている。
やっぱり無気力そうに見えるが、その目はどのお菓子を見るときよりも輝いていた紫原。
現実でやっと会えた一目惚れの相手に目を潤ませて、見えない尻尾を振っている黄瀬。
黒子は、泣き笑いのような笑顔を浮かべて、はちの頬に手をやった。
桃井は最早もう泣き崩れ、泣きながらもかすれ傷の手当てをこなしている。
うっすらと目を開いたはちは───
『───大好き』
と呟いて、また意識を飛ばした。