第21章 夢から覚めた日
《───おい、はち》
『・・・ん・・・・・・あれ・・・』
次に目を覚ましたその空間は、どこか見覚えがあって。
そう、私がずっと夢で見てきた世界だ。
ここは・・・2.5次元の世界。
現実の世界と、二次元の狭間の空間。
そんな空間の中にいるのは、私と──愛しいアノ人。
《・・・いい加減、起きろよな》
『先輩。私は──』
意味なく涙が零れる。
自分の本当の名前を思い出せたことが、こんなに嬉しいとは思わなかった。
『──私の名前・・・っ
・・・わたし、はち、だ・・・っ』
《・・・お前は、はちだよ》
そして、大好きな人に名前を呼ばれる幸せ。
そうか、こんな気持ちなんだ。
恋って。
名前を覚えてくれてるだけで・・・
呼んでくれるだけで・・・
私は、この世の幸せをすべて受けているような感じ。
『せんぱい! わたし、』
《だめだ! そっから先は俺の言うところだからな》
そういわれて、口をつぐむ。
その瞬間、腕を引かれて。
簡単に、先輩の腕のなかにいた。
《〔みんな、待ってる〕・・・
〔帝光バスケ部で待ってる〕。
お前を、
〔惚れさせてみせる〕。
〔はやく、戻ってこい〕。
〔やっと、会えた〕。》
虹村先輩が言っているはずなのに、
みんなの笑顔が浮かんできて。
頭をくしゃくしゃに撫でられて、涙がまた出てきて。
《───はち》
『! 赤司くん!』
気がつくと赤司くんもいた。
そして、次は赤司くんに腕を引かれて。
虹村先輩は、背中を押してくれた。
《──目ぇ覚ませ!! はち!!》
《──時間がない。急ぐんだ!》
『っえ・・・!?』
《──全員、》
《──お前を信じてるよ》