第20章 夢
夢は今日も、やってきた。
《──あー!!
やっと、会えたッス!》
『ぅえ? き、黄瀬くん?って人?』
《そっすよー
俺、あんたに会いたくて頑張ったんスよ☆》
『へ、へぇ・・・』
《はち、さんだったっけ?
じゃあ、はちっちッスね!》
『ちょ、勝手にあだ名つけないでよ・・・』
《・・・まぁ、そんなことよりも》
ぐいっと腕を引っ張られ、彼──黄瀬涼太と至近距離になる。
いかにもモデルらしい、香水の香りがした。
『ちょ、なんなのいきなり──』
《あれ? ・・・ドキドキしないんスか?》
『初対面の男と至近距離になってドキドキする奴がいるか!』
黄瀬の胸板を叩き、腕を離すよう要求する。
だけど、当の黄瀬は唖然としたまま。
『・・・なるほど。みんなが言ってた通りッスね』
《は!? みんな!?》
〔お前じゃ、はちをオトせられねぇよ〕
昨日、青峰に言われた言葉。
そんな女、いるはずがないと余裕ぶっこいていた自分を蹴り飛ばしたい。
『・・・あのさ、早く離してもらえないかな?』
《イーやーだーッス!
・・・なんかはちっちに惚れちゃったかも》
『はっ?』
至近距離から、距離ゼロになる。
あった空間がなくなり、先程まで叩いていたはずの胸板が目の前に。
『───ちょ・・・・!』
《・・・情けねぇけど、一目惚れってヤツッスわ》
『はい!?』
上を見上げると、綺麗に整った黄瀬の笑顔が。
《───はちっち》
『もーなに?』
《──大好きッス!
・・・早く戻ってきてくれないと、俺泣いちゃうッスよ~
あ、それと・・・キャプテンには渡さないッス
はちっちを惚れさせてみせるッスから》
『え? ・・・は、はい・・・』
ふわっと腕が解かれ、体温が離れる。
──黄瀬、
「───・・・涼太・・・」
目の前が、朝日に包まれた。