第19章 大好き
部屋に入り、電気をつける前にベッドの傍に寄る。
そこには、眠るように目を閉じているはちの姿。
「・・・もうお前、寝てるようにしか見えねぇよ」
笑ってみるが、起きる気配などない。
おい、俺が笑ってんだぞ
千年に一回の奇跡だぞ
なんてふざけてみても、虚しいだけ。
笑ってくれるわけがない。
あの頃のはちはもういない。
「・・・好きだ・・・」
『・・・──にじむーかな───・・・』
「──・・・え、」
こいつ!!?
いまっ、
「おい! はち!?」
呼びかけたが、返事はない。
目も開かない。
幻聴だっのかと不安になる。
だけど、正真正銘、こいつの声だった。
俺を、変なあだ名で呼んでいた。
「帰ってこいよ。
はち、お前のこと忘れてるやつなんかいねぇぞ。
しってんのかよ。
あの灰崎が、女遊びも喧嘩もしてねぇんだ。
《あいつが知ったらぶん殴られるんでー》
だってよ。
笑えちまうよな。
青峰も緑間も、なんでお前が居なくなったのか不思議でたまんねぇみてー
《なんでいねぇんだよ》
って、怒ってたぞ
《・・・最近運勢が悪い。はちがいなくなってからずっとそうなのだよ。》
だってさ。
緑間らしいよな
紫原はもうずっとポケーっとしてやがる。いつもだけど、倍以上に。
・・・赤司も。
《・・・彼女が目を覚ますまで、俺は待ってます》
って。そういってた。
なぁ、帰ってこいよ。
黒子も・・・あと、黄瀬ってやつも入ってきたんだよ。
《はちさんは、絶対に帰ってきます。
簡単に消えるような人じゃないです》
って・・・
《えー! 誰ッスかその『はち』って!
俺も会ってみてぇッスよー》
って、いってやがんだ。
帰ってこい・・・
・・・おい、起きろよ。
俺もうあいつら全員の声マネしたんだぞ。」
虚しいだけだ。