第17章 多くの天敵
──虹村side──────────┐
昨日からずっと・・・この辺が変だ。
いや、原因なんて分かってる
認めたくないだけだ
モヤモヤとする頭と心臓辺り。
芽生えている気持ちに整理がつかなくて、どうしようもない。
こんなんじゃ、バスケにさえ集中出来ねぇじゃねぇかよ
【はち】
『あ! にじむー!
今日の練習メニューはなんですか?
それによってドリンクの量調節しますから』
やめろ
そんな声で、そんな笑顔で、俺に近づかないでくれ
お前が誰に好意を寄せているのかくらい、疎い俺にだってわかんだよ
頼むから・・・振り回さないでくれ
【はち】
『・・・先輩?』
「・・・なんでもねぇ。
今日のメニューは赤司に任せたから、赤司に聞いてくれ」
【はち】
『えっ、あ、はい』
パタパタと去っていくはち。
その後ろ姿に、心臓が八つ裂きにされた痛みが走る。
あぁそうか。
好きって、こういうことなんだな
「・・・嘘だ。嘘だよ・・・
戻ってきてく、れ・・・」
男が泣くなんてみっともねぇ
ぐっと拳を作り、涙をこらえる。
涙はあの日に置いてきた。
あの日以来、泣こうなんて思ったことも無かったが。
今この一瞬が、俺のその理念を揺るがした。
本当、お前の前だと調子が狂うわ・・・