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死神に教わる甘え方。【R-18】

第5章 12月17日【あと7日】


「着いた……」

日曜日に学校に来るだなんて、変な感じ。
学校には入らず、隣にある喫茶店の前に立つ。
いつの間にか、ネックレスから人の姿に戻っていた。

「ここ、よね?あんたが言ってたのって」

「………」

「ねえ、聞いてるの?」

私が問いかけても反応なし。
なに?反抗期?
いつもはやたら従順なくせに。

文句でも言ってやろうと、私の前に立つがーみんの顔を覗き込む。

「どうして……どうして、どうしてどうしてどうしてっ!!」

急に叫びだした彼に驚き、思わず後ずさる。
私なんて見えていないみたいに、彼は叫び狂い続ける。

「……んでだよ……。おかしいだろ!今まで俺がしてきたことは何だって言うんだよ!!おい、答えろよ!答えろ、ニーナ!!」

ニーナ?
私と彼以外、ここにはいない。

「……は?分からない?ふざけんな!」

彼には何が見えているというのだろうか。
私には見えていない何かが彼には見えて、私の知らないことで苦しんでいる。

「ど、どうしたの……?」

勇気を振り絞り、そっと彼の背中に手を添える。でも、その手も呆気なく払われる。

「触らないで。今の俺、おかしいから」

拒否、された。
初めてだ。
拒否なんてされたの。

彼は何を見てこんなにも苦しんでしまったのか。おかしくさせてしまったのか。

彼の目線の先にあるもの。

それは、喫茶店の看板。
そこにはバイト募集の紙が貼ってあった。
楽しそうな従業員の集合写真と、詳細が書かれてあるだけで、どこにでもあるような普通の貼り紙。

彼がどこを見て叫んだのか、何を見ておかしくなってしまったのかなんて分からない。

分からないのが辛い。

でもそれ以上に、払われた手が痛い。胸が痛い。胸を抑えてもおさまらない。手の届かない、ずっと奥の方がちりちりと痛む。

どうしてか、すごく涙が出そうだ。
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