第1章 突然に現る
「早死?」
「ええ、そうです」
早死……。
え、ちょっと待って。
「それは困る!」
私が叫ぶと、死神がそうでしょうそうでしょうと頷く。
「だって、まだしなきゃならないことがたくさん残ってるもん!」
「え!?あ、そっち!?」
「生徒の懇談の内容を考えなきゃだし、今年は受験生を受け持ってるからその子達をちゃんと見届けて、それから新1年生を迎える準備をしなきゃだし……ああ、やることがいっぱい!だからまだ死ねない!死ぬんだったらもうちょっと待って!」
「ええ!?いやだから」
「今は12月だから……せめて来年の4月!」
いやでも4月も忙しいし……。せめて、5月……いや、5月も………。
「だからあなたに早死されると困るのです!」
意外な発言に私は、へ?と聞き返してしまう。死神=人の魂を狩る、じゃないの?
「先ほども言った通り、あなたはまだあと60年は生きることになっています。つまり、あなたは今26歳なので、90近くまで生きられるのです。ですが、このままではあなたは早死してしまいます。それは俺たちにとってはすごく困ることなんです。とは言っても、人間のあなたには分からないでしょうけど」
「あー、分かるわ」
「ええ!?」
「あれでしょ。要するに、課題の提出期限を過ぎても困るけど、早すぎても困るってやつ。分かるわ。すごく分かる」
腕を組んで、うんうんと頷く。
いるのよね。私のクラスにも。課題を遅れて出す生徒と、早く出来ちゃったからって期限の1週間前に提出してくれる生徒。期限通りが一番いいのに。
「わ、分かってくれてありがたいです。まあつまり簡単に言うと、あなたがその性格のせいで早死してしまうのを俺は救いに来た、という訳です」