第3章 12月15日【あと9日】
【死神side】
はっと我に返ると、近い距離の所に彼女がいた。感情的になり過ぎた。すみません、と一言謝ってからそっと離れ、キッチンに向かう。
俺の使命を忘れるな。
どうしてこんなにも感情的になってしまったのだろうか。俺はいつからこんな性格になってしまったのだろうか。
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いつもとキャラが変わりすぎて、少し……いやかなり驚いた。
別に森下先生との事はやましい事ではないが、やましいか、と問われれば少し言葉に詰まる。
黙々と夕飯を作り続ける死神に何度も声を掛けようと思ったが、それが言葉として発せられることはなく、私の口からは頼りないため息が漏れるばかりだ。
あれ、そういえば。
私、彼の名前、知らないじゃん。
訊こうかと思ったけど、
今更、
しかも、今、
この状況で、
訊けるはずがない。
死神の言っていた言葉がどういう意味かは分からない。分かろうとしても、身に覚えの無いことすぎて頭で理解が出来なかった。
仮面の奥でぎらりと光った目を、私は少し怖いと思った。我ながら酷いとは思うが、あまりにも孤独に光っていて、悲しげで、狂気さえも感じた。それを怖いと思うと同時に、守りたいと思った。
彼とは知り合ってまだ3日目。
顔も名前も知らない。
でも、ふとした瞬間に感じる親しみ。
あるはずがない。
そんなこと、一番私が分かってる。
でも、思ってしまう。
彼と私は、どこかで会った事があるのではないか、と。